人生を狂わせる10本の映画

シネマ4の字固め 著「人生を狂わせる10本の映画」を読んだ。Kindle で初めて読んだ本となった。

人生を狂わせる10本の映画

人生を狂わせる10本の映画

値段がえらく安いので購入時に不思議に思ったが、読んでみると値段以上に(と言っては失礼か)あっさりと読めてなるほどと納得した。(つまりは総ページ数がたいして多くない。)
いつも聴いているシネマ4の字固めの映画批評 Podcast は、おそらくどこかの飲み屋で収録しているためか店内の雑音が絶えず聞こえてきてけっこう騒がしい感じなのだけど、この Kindle 本版はそういう騒音なしで静かに落ち着いて二人の映画批評を聴いているような雰囲気を味わえた。
この本で「10本」に取り上げられた映画は、著者の二人が小学生とか中学生時代に出会った映画が多くて、ここ10年くらいの映画でそういうのはないの?とこちらの勝手な期待にやや肩すかしをくらったような気持ちがしないではなかった。でもまあ、10代というのは多感な時期だから、本を読み進めていくと、「人生を狂わせる」と頭に付く映画がそのあたりの時期に集中しているのも頷けるものはあった。
自分にとってのそんな映画は何だろうと思いを巡らせてみると、ぱっと浮かんできたのは、やはり子どもの頃に観た映画で、それは「ターミネーター」が外の肉体が焼失して鉄の骨組みだけの姿になってもなお目的を遂行するために主人公を執拗に追い詰めるシーンだ。
30年くらい前、自宅の離れの二階にある薄暗くてじめっとした部屋に小さな古いテレビが置いてあって、なんとか洋画劇場とかの映画放映を一人で集中して見たいときには夜9時前になるとよくその部屋にあがって心細いようなちょっと怖いようなそわそわした落ち着かない気持ちを抱きながらも、カラーがやや色あせた、字幕の端が少し切れるくらいの小さな画面に没入して映画を見ていた。
そんな環境も手伝って、タンクローリーか何かの大型トラックが爆発炎上し、ついにターミネーターをやっつけたと安堵したのも束の間、炎の中からゆっくり現れるあの独特な骸骨顔をもったロボットが、ゾンビのようなぎこちない動きでガシャーンガシャーンと歩いてくるシーンは、子ども心にとんでもなく恐ろしかった。そのことを今でもよく覚えている。
「人生を狂わせた」というのとはちょっと違うかもしれないが、でもあれが映画の素晴らしさを心身の底から味わった原体験だったことはたぶん間違いない。
映画というのは、いくら人から勧められたり批評を聞いたりしたところで、結局は自分で最初から最後まで見てみないことには面白いかどうかというのは分からないわけで、次に見る映画がもしかしたら自分の「人生を狂わせる」一本にならないとは限らないからこそ、映画を観るのはやめられないんだよなぁと読了後にしみじみ思った。