女のいない男たち

村上春樹 著「女のいない男たち」を読んだ。

女のいない男たち

女のいない男たち

タイトルから、本当に女っ気のない男(たち)が登場する話しかなと想像していたら、ぜんぜんそんな事はなくて、正確には「(昔はいたがある時点で失って今は)女のいない男たち」の話しだった。考えてみれば、かつて村上春樹の小説に女っ気のない男が主人公の話しなんてあったためしがないような気はする。
たとえば”フルーツキャンディー”というパッケージの中の6種の味の飴玉のように、6編の物語それぞれに独特な味わいがあって楽しめたけれど、特に気に入ったのは「シェエラザード」と「木野」かなと思う。
シェエラザード」は、読み進んでいるときに本当に自分もドキドキした。そういう意味でとても魅力的な話しだった。終わりの辺りで、『誰もが人生の中で、一度はそういう出鱈目な時期を通過するのかもしれない。(中略)ねえ、あなたにはそういうことってあった?』という問いかけがあるが、僕にもそういうことはあった。とても人に話せるようなことではないけれど。
「木野」は、読んでいて少し懐かしい感じがした。小説の世界観とか文体とかの中に、昔の村上春樹の短編小説に近いにおいを感じたからかもしれない。物語の半分か、3分の2くらいまではとても好きなんだけど、終わりがどうも消化不良気味で、自分の中の納得のいくところにまだ落ち着いていない。気に入った味の飴玉を途中でふいに呑み込んで、喉に詰まらせてしまったみたいに。
短編小説のいいところは、自分の好きなときに2回でも3回でもわりと気楽に読み返せることだ。
次に読む本は(いよいよ)「1Q84 BOOK 3」と決めているが、それを読み終えたあとに、またこの短編集を読み返してみたいと思っている。