鳴声

「静かな、静かな、里の秋」という歌詞から始まる歌があるけれど、昼夜によらず「ほんと静かだなぁ」と感じることが度々ある。昼間は、セミの声もカエルの声もしなくなったし、田んぼは稲刈りがすんでなんだか閑散としているし、そういう雰囲気が静寂感をかもしだしているのかもしれない。
夜は、鈴虫がつねにリンリン鳴いているので、けっして無音ではないのだけど、その鳴き声がやけにくっきりと耳に届いてくるので、よけいに静けさを感じるのかもしれない。そして、ときどき遠くの方から鹿の鳴き声が聞こえてくる。たしかに女性の悲鳴のように「キャーキャー」と聞こえなくもない。なんというか、不快な感じのする声だ。
子どもの頃、いや10年くらい前だって、秋の夜に鹿の鳴き声なんて聞いたことがなかったような気がするのだか。鹿の数が増えたのだろうか。人家に近いところで暮らすようになったのだろうか。鹿やらイノシシやらタヌキやら、対立するのではなくほどほどに共存していく道を探っていかなければならないようなことを、ぼんやりと考えた。