初めての剪定 (2)

ずっと昔、学校を卒業して最初の会社に入る前くらいに将棋を覚えたのだが、将棋というものを知ることで、自分の世界が少し広がったという感覚をじわじわ感じたことを今でも記憶している。それまで目にとめたこともなかった新聞の将棋の記事の盤面図を見るようになったり、日曜日のNHK杯の対局を見るようになったりして、新しい世界の扉を開いて足を踏み入れたような新鮮な感動と喜びを味わった。
それと同じような感覚を、「剪定」というものを知りはじめた今、再び味わいつつある。「図解でハッキリわかる落葉樹・常緑樹の整枝と剪定」という本を一冊読んで、桜の木の不要枝を少し切ってみただけなのだが、それ以来、周りの風景を見る目があきらかに変わった。
まず、自分の家の庭だとかの土地にいろんな木が生えていることに改めて気付いた。そして、そのほとんどがロクに手入れもされず、たいてい伸びるにまかせて放置してあることにも気が付いた。今まではそれが当たり前だと思っていた。
それから、車で町中を走っているときに、家々の庭に生えている木に目が留まるようになった。「この木はよく手入れされているな」とか、「あの木はほったらかしてあるようだから剪定した方がよさそうだ」とか、そんな事を考えるようになったのは生まれて初めてのことだ。(つづく)